摩擦攪拌接合「FSW」

川並鉄工では機械加工に加え、新たに既存設備であるマシニングセンターを活用した摩擦攪拌接合の技術確立に取り組んでいます。
その過程で従来の溶接では接合できなかった薄板のアルミニウム合金の接合に成功しました。
これにより、歪みやすい薄板構造のアルミニウム合金でも接合することが可能となり、車輌や医療機器、自動車、船舶、その他産業用機械等の製作に活用されることが期待されます。
また、FSWによる異種金属の接合にもチャレンジしています。【アルミと銅異種材接合に挑戦】

摩擦攪拌接合「FSW」とは

FSWは使用する回転ツールで発生する摩擦熱・圧力・攪拌の3要素を利用して塑性流動を起こし、2つの部材を固相接合する技術です。
母材を溶融することなく接合するので歪が小さく、接合部が微細構造となり強固な接合となります。
溶接棒を使用しないことで溶接ヒュームが発生せず、大電流・高電圧を必要としない環境にやさしい技術です。

FSWを用いた突合せ接合の模式図

要素技術の特徴

【摩擦攪拌接合(FSW)は必ずしも専用機を必要としない技術】

弊社では専用TOOLをMCに装着して接合を行います。その為接合前後の機械加工をスムーズに行うことが出来ます。

【接合条件は数値で管理】

最適条件を数値管理することにより作業技能に関係なく最良な品質を安定して再現できます。

【歪みが少ない接合、しかも異材接合が可能】

FSWは母材を高温で溶融せず攪拌して接合します。熱影響が小さく歪みが少なくてすみます。
また接合を工夫することにより金属間化合物の少ない異種材の接合も可能な技術です。

【FSWは環境にやさしい接合方法】

電気溶接とは異なり溶接棒を用いません。そのため溶接ヒュームが発生せず、また他の接合のように大電流・高電圧も必要としません。

摩擦攪拌接合(FSW)突合せ接合

MC工作機械を使用した従来の切削機械加工と摩擦攪拌接合を合わせた複合工程により、歪みやすい薄板構造のアルミ合金の接合を可能としました。

【突合せ接合の特徴】

  • 摩擦攪拌接合によりアルミ合金を溶かさず接合が可能な為、歪みが少なく薄板構造に適用できます。
  • アルミニウム合金、銅の突合せ接合が可能です。

【開発の秘訣】

川並鉄工株式会社は、1904年創業以来、鍛冶屋、製菓機、遊具製造と、時代と共に業態を変えてきました。
近年は、「大きなものこそ細やかに」をモットーに大型機械部品の切削加工を主体に、鉄・アルミ・ステンレス・難削材・カーボン(CFRP)等、中・大物部品の精密切削加工、溶接、板金、研磨や表面処理に至るまで一貫したサービスを提供しています。
また、切削加工技術をデザインを融合した金属障壁画「刻鈑」を開発し、意匠の世界にも挑戦しています。
今回の技術開発は、大型・3次元のマシニング加工で培った大型部品の高精度加工技術をベースにしながら、常に新しい事業開発に努めてきたことが成功要因であると考えています。

摩擦攪拌接合(FSW)の応用開発

【アルミと銅異種材接合に挑戦】

異材種(銅とアルミニウム)をFSW摩擦攪拌接合して作成した冷却プレートのサンプル品

FSWは母材を高温で溶融せず攪拌して接合します。
接合を工夫することにより金属間化合物の少ない異種材の接合も可能な技術です。
冷却プレートの受熱部分は熱伝導率の高い銅を、ボディーには軽量なアルミを用いることで軽くて熱交換率の高い冷却プレートを提案します。

【冷却パネルの製作にFSWを利用】

MC加工とFSWを用いて冷却パネルを開発しています。
MC加工でジャケット内部を流れる水路を加工し、別途準備した蓋を被せFSWで接合して冷却パネルを完成させます。
MC加工で水路を加工する為、ほぼ思い通りの箇所に水路を設けることが可能です。
試作品では2.0MPでも漏れ生じていません。

FSWで造る冷却パネルの利点

  1. 必要な箇所に流路をMCで加工出来る
  2. 本体と蓋の部材を攪拌して接合(一体化)するので強固なものとなる
  3. パッキン不要
  4. 耐久性が高い
  5. 接合後の機械加工が可能
  6. ワークサイズはマシニングセンタの大きさ
アルミニウムに水路を削り出し、FSW摩擦攪拌接合で蓋をして作成した冷却パネルのサンプル品

【「接合温度200℃を超えるとNG」でも大丈夫】

FSWを用いたアルミパイプ

長さ2000㎜のアルミパイプに機能部品を納めて密封したい。
但し200℃以上の熱を加えると部品が機能しなくなる。そんな要望にお応えしました。
FSWは母材を高温で溶融せず攪拌して接合します。熱影響が小さく歪みが少なくてすみます